「中小企業診断士ってどう役立つの?」「中小企業診断士の資格を取ると本当に仕事や収益につながるの?」そんな疑問をお持ちの方へ。本連載は、中小企業診断士を取得して約20年にわたり活用してきた私が、最新動向や市場分析を踏まえ、その実際と可能性をリアルに語ります。まず今回はAIを活用した環境分析結果をシェアし、今の診断士が直面する現状と将来展望を探ります。さらに、外資系コンサルタントや企業内診断士を経験した立場から見えた「経営コンサルのリアル」もお伝えしながら、資格取得を検討する方・すでに診断士として活動中の方、それぞれに有益なヒントを提供していきます。0. はじめに (中小企業診断士について書こうと思った背景)私は19年前に中小企業診断士資格を取得し、外資系コンサルティングファームや大手製薬会社の経営企画・人事企画を担当する「企業内診断士」を経験したのち、コンサルティング会社を立ち上げ、現在12期目を迎えています。いわゆる中小企業向けの公的支援業務は数年携わった程度で、主に上場企業向けの戦略・組織人事コンサルティング、エグゼクティブコーチング、ビジネススクール講師などが中心でした。来年には4回目の資格更新(5年ごとに更新)が控え、通算20年という節目を迎えます。といっても、診断士協会にも全く所属してこなかったため、まずは私自身が中小企業診断士の最新動向について理解を深める必要があると考え、最新のAIを活用しながら環境分析を行いました。ここでは、その分析結果を共有しつつ、中小企業診断士の「今」を改めて捉え直すことで、資格取得を検討している方はもちろん、すでに診断士として活動している方にも有益な示唆をお伝えできればと思います。今後の連載では、私が歩んできたキャリアやコンサル実務のリアルと併せて、診断士資格をいかに自分のビジネスや人生設計に活かせるかを掘り下げていきます。どうぞお楽しみに。今後のテーマ案「外資系コンサルのリアル」「企業内診断士のリアル」「独立コンサルのリアル」「仕事獲得のリアル(案件の取り方)」「報酬とお金のリアル(年収3000万円への道)」「クライアント対応のリアル(トラブル&成功事例)」「資格更新のリアル(診断士20年目の節目)」「外資×企業内×独立のリアルな比較」「独立後に感じた“本当の自由”と“想定外の苦労”のリアル」「これからの診断士と、自分のキャリアを作るためのリアル」1. 診断士業界の最新動向AI・DX時代における診断士の役割:中小企業診断士という国家資格は、経営や財務・会計、さらにはIT・経済学など、多岐にわたる試験科目に合格し、所定の要件を満たして登録することで取得できます。独占業務こそありませんが、広範な知識と能力を活かし、中小企業の経営課題を解決する“経営ドクター”的な役割を担える点が大きな魅力です。近年はAI・DXへの需要が高まり、ITリテラシーを兼ね備えた診断士が各種コンサル業務を受託しやすくなっています。実務補習や研修を通じて最新のIT・デジタル動向に対応できれば、「AI導入の方法をアドバイスする」「経営情報システムの選定・導入支援を行う」など、より専門的な案件にも携われるでしょう。社長や管理職クラスと対等に議論しながら、組織改革やシステム導入を推進するため、資格取得後も学び続ける姿勢が求められます。国の中小企業支援策と診断士の仕事:中小企業庁が推進する施策(例:ものづくり補助金、事業再構築補助金など)と連動して、中小企業診断士の業務領域は拡大傾向にあります。たとえば補助金申請における経営計画書の作成支援や経営アドバイスは、診断士が得意とする分野の一つ。ただし、公的機関を通じた案件は報酬単価がやや低めになりがちです。そのため、法人や個人事業主と直接契約するコンサル業務を組み合わせて、収益を確保している診断士も多数います。令和6年・令和7年にかけて補助金制度が更新されれば、関連する仕事や求人も増える可能性大。診断士試験を受ける方は1次試験・2次試験の日程だけでなく、こうした政策・施策の動向もチェックしておくとよいでしょう。コンサルニーズの高まる領域:コロナ禍を経た事業再構築やM&Aの増加に伴い、戦略的支援やデジタル活用支援を担う“令和的な診断士”が注目を集めています。試験で学ぶ経済学・財務・企業経営理論といった科目は、大手企業やIT分野でも応用が効き、実際に独立や企業内で活躍する人が年々増加中です。オンライン講座や無料セミナーを活用しながら独学で合格を目指す方もいますが、実は難易度は決して低くありません。1次試験・2次試験ともに対策が必須で、合格までのスケジュール管理やモチベーション維持が重要。“バイト感覚”ではなく、本気で経営知識を身につける覚悟が、合格後のキャリアにも大きく影響します。2. 独立診断士の成功要因と収益モデル高年収層(年収3,000万円超)の特徴:独立して多角的に案件を受託し、数社の顧問契約を同時並行でこなす独立診断士は、月あたり数十万円の顧問料が複数社から入るため、高い年収を稼ぎ出すことも珍しくありません。さらに研修講師や出版(印税)、オンラインサロン・セミナー運営など、スケーラブルな収益源を持つ診断士は、年収3,000万円を超えることも実際にあります。こうした高収益層に共通しているのは、「試験合格後も実務補習・継続学習でスキルを磨き続ける」「商工会や診断協会など公的機関のネットワークをフル活用する」「実際のコンサル現場で得た知識やフレームワークを体系化して情報発信する」など、地道な努力と営業活動を怠らない姿勢です。独立診断士の収益構造:典型的な独立診断士の収益源は、以下の4つに大別されます。公的支援業務(補助金・経営相談など)民間企業との顧問契約(経営改善、IT導入支援、組織改革など)研修・セミナー講師(企業研修、教育機関・外部講座の講師)出版・オンライン発信(書籍、ブログ、SNS、YouTube等)公的案件は報酬が安めでも実績づくりやネットワーク形成に最適で、そこから民間企業との直接契約につなげるパターンが多いです。また、税理士・社労士事務所と提携し、「経営×税務×労務」をワンストップで提供する高付加価値モデルも存在し、企業側からのニーズも高まっています。3. 企業内診断士のキャリアパスと市場価値企業内診断士が活躍できる領域:中小企業診断士試験で学ぶ幅広い知識は、中堅・大手企業の経営企画や管理部門でも生きるケースが少なくありません。内部コンサルタントのような立場で、新規事業や組織改革、人事制度の設計などに携わる人もいます。会社によっては資格更新の研修参加を奨励してくれたり、「社内に経営の専門家がいる」というPRになるメリットも。さらに、副業解禁の流れを受けて、平日は企業内診断士として働きながら、休日や夜間に個人でコンサル・セミナーを行う「二刀流」を実践する診断士も増えています。会社勤務の安定感を活かしつつ、自分の専門性を外部にも提供できるのは大きな強みです。資格手当や昇進への影響:企業内診断士の中には、毎月数万円の資格手当を受け取れるケースもあります。しかし、必ずしも昇進や昇給に直結するわけではなく、企業の評価制度によって温度差があります。とはいえ、中小企業診断士は国家資格であり、転職市場で「経営・コンサル能力の証」として一定の評価を得られることは事実。金融機関やIT企業で、社内向けコンサルタントとして重用される事例も増えています。4. 診断士の年収・市場価値の最新トレンド平均年収と働き方の違い:厚生労働省のデータなどから、中小企業診断士の平均年収は700万~800万円ほどとされますが、独立か企業内か、あるいは専門分野や営業スタイルによって大きく変動します。試験に合格し、資格登録を済ませても、自動的に案件が舞い込むわけではないため、営業力や実務経験が物を言います。ITや財務の専門性を備えた診断士は、高単価の顧問契約やプロジェクトを受注できる場合があり、年収1,000万円を超えることも十分可能です。特に、DX推進やデジタルマーケティング分野では企業のニーズが旺盛で、「経営×IT×財務」のスキルセットを持つ診断士は重宝されがちです。令和6年・令和7年以降の展望:大規模補助金や事業承継の支援案件など、公的分野での仕事が増えてきた一方で、単価は低めになる傾向も否めません。そこで実務補習や企業支援を通じて専門領域を確立し、最終的には大手企業や法人への直接コンサル契約を狙う診断士が増加しています。働きながら独学で試験に挑む場合、8月の1次試験→10月頃の2次試験→12月や翌年1月の合格発表という流れを見据え、長期的なスケジュール管理を徹底することが大切です。5. 診断士業界の課題や批判的意見ネガティブコメントの背景:「やめとけ」「意味ない」は本当?ネット上で「中小企業診断士はやめとけ」「仕事にならない」といった声が散見されるのは、「資格取得=高収入」と誤解されやすいからです。実際のコンサルティング業務は営業力や人脈、継続的なスキルアップが必須で、独占業務がないぶん、競合が多いのも事実です。しかし、これは逆に言えば「どうすれば稼げるかを自由に考えられる」ということでもあります。公的機関と民間企業の仕事を組み合わせたり、SNS発信で認知度を高めたりと、自分ならではの強みを確立すれば十分にチャンスがあるのです。実務での課題(価格交渉・評価手法など):診断士業務において顧問料やセミナー料の設定が難しいという声は多いです。料金相場がはっきりしないため、低価格競争に陥る恐れがあります。ただ、実績を積みネットワークを広げることで、高付加価値案件を獲得し単価を上げていく戦略が一般的です。また、施策の変更や補助金制度の入れ替わりなど、公的支援業務の内容が短いスパンで変わることも多いため、常に情報収集を欠かさず、「どんな案件に力を入れるか」柔軟に判断する必要があります。6. 戦略系コンサルタントと中小企業診断士の違いサービス領域とクライアント層:マッキンゼーやBCGなど戦略系コンサルタントは、大企業の全社戦略やグローバル展開を対象に、データ分析やフレームワークを駆使して短期集中で課題解決を図ります。一方、中小企業診断士は、中小企業への現場密着支援や補助金活用など“泥臭い実務サポート”が強み。地元商工会と連携し、経営者と二人三脚で改善を進めることが多いです。もちろん戦略的思考力は求められますが、提案から実行・フォローアップまで伴走するのが中小企業診断士の特色です。資格の有無と業界評価:戦略コンサルに入社するのに必須の資格はありませんが、診断士資格は“経営コンサル唯一の国家資格”として信頼性を得やすいのが利点。独立志向の人や補助金申請業務を扱いたい人にとっては大きなアドバンテージで、他士業との連携もしやすくなります。7. MBAと中小企業診断士の違い学習内容・アプローチ:MBAは大学院でケーススタディを中心に学び、グローバルビジネスや高度なファイナンス理論に精通する一方、中小企業診断士試験は経済学・財務・運営管理・企業経営理論・経営情報システムなど、“日本の中小企業支援法”に沿った知識を習得します。合格後には実務補習が義務付けられ、現場スキルの向上も視野に入っています。費用対効果とキャリアへの影響:MBAは数百万円~数千万円の学費がかかる上、フルタイムで1~2年学ぶ形が一般的。一方、診断士受験はTACなどの予備校を使っても数十万円程度に収まるケースが多く、働きながら取得しやすいというメリットがあります。ただし、外資コンサルやグローバル企業に強いのはMBA、一方で中小企業や地域密着型の経営支援には診断士が向くなど、それぞれに強みと得意分野があります。8. タイプ別に見る中小企業診断士の適性と活かし方独立志向の診断士:中小企業診断士は、「国家資格+経営ノウハウ」が得られる点で独立を目指す人に人気ですが、自分で案件を獲得するための営業力や情報発信は不可欠です。合格後は実務補習や診断協会の活動を通じて実績を積み上げ、セミナー講師や書籍執筆など露出を増やすことで、高単価のコンサル契約を取りやすくするステップが一般的です。企業内診断士:企業内でのキャリアアップを目指すなら、診断士資格を取得し経営企画や新規事業部門に異動する道もあります。業務ノウハウを学ぶうえでも試験勉強が大いに活かせるので、働きながらTACや通信講座で効率的に学ぶ人が増えています。社内評価だけでなく、副業コンサルや転職時の武器にもなります。副業・ダブルライセンス:すでに税理士や社労士、行政書士資格を持つ人が「中小企業診断士」も追加で取得し、“ワンストップの経営支援サービス”を提供するケースが増えています。またMBAホルダーが追加で診断士を取ることで、戦略構築から現場支援までカバーできるポートフォリオを築く例もあります。まとめ資格(中小企業診断士)の試験対策とキャリア展開中小企業診断士は試験科目が多く、合格までの道のりは容易ではありません。しかし、一次・二次それぞれに合格すれば“実務と理論の両輪”を身につけられ、独立や企業内での活躍につなげやすくなります。年収アップの鍵は「独自強み×情報発信」試験を突破しても、自動的に高年収が約束されるわけではありません。補助金支援やIT・財務の専門性、SNSやブログを使ったブランディングなど、自分にしか提供できない価値を際立たせるほど、単価アップが期待できます。令和6年・令和7年以降も高まる“経営の専門家”への需要DXや事業承継、コロナ後の再編など、中小企業が抱える課題は多様化・複雑化しています。独占業務はないものの、その分さまざまな領域と連携しやすい診断士だからこそ、これからも必要とされる存在となるでしょう。長年、中小企業診断士資格を活かしてきた経験から見ても、「経営のドクター」という立ち位置は時代ごとに求められる役割が変化しつつ、確実に拡がっていると感じます。試験科目が多い分リスクもありますが、スキルとネットワークを得られれば、独立・副業・企業内でのキャリアアップなど多彩な選択肢が開けるはずです。今後の連載では、具体的な勉強法やコンサル実務のリアル、さらに私の独立・企業内経験を踏まえた“戦略的なキャリア構築術”をお届けしますので、どうぞお楽しみに。